ドラマ版 きもの秘伝 กลกิโมโน あらすじ

☆放送2015年4月16日~


25年前ー

月の町の狭い小路にある小さな飲み屋で、小説家なのか物書き風の中年の男が店主から注いでもらった酒を飲んでいる。

その酒を飲み干すや、少し酔ったように話を切り出した。

 

「日本中を巡っていろんな伝説について情報を取材したが、一番興味深かったのはここの月の村の鶴の神と狐の神の伝説だっただよ。」

 

「単に語り継がれてきた伝説で、詳しいことは私も知らないですよ。」

店主がそう答えた時、突然、

「もし あなたが聞きたのでしたら、お話しましょう。」と、会話に割り込む声がした。

二人が驚いて声の方を振り向くと、店の隅で茶を飲む白い着物を着た端正な顔立ちの落ち着いた雰囲気の若者がいた。

 

小説家は即答した。「聞きたいですよ、この月の町に来たのはその話を聞くためだったんですから。とは言っても、あなたはこの話を本当によく知っているんでしょうね?」

謎の若者と小説家は離れたところに座り、話を始めた。

 

「伝説というのは聞けば単なる作り話で本当ではないと思うでしょうが、その言い伝えの何が本当で何が嘘なのかをわかるのは誰でしょう。」

 

「その状況に実際にいた人が話の主で現在まで長生きしているのなら、彼こそがその話が本当だと立証できる人ですね。」小説家は答えた。

 

それに対し若者は笑顔で応え、そして言った。

「その通りです。しかし誰がそんなに長生きできますか?そういうわけで月の町の鶴の神と狐の神は単なる伝説になったのです。その話は・・。」

 

星から語られる鶴の神の伝説ー突然、美しい空想の絵になるー 

 

星が輝く夜空に他の星よりも明るく輝く二つの星群があり、互いに別々の場所にあった。

一つの星群が徐々に繋がって女性の姿になり、もう一方の星群が翼を広げた鶴の姿になった。

 

星はその星について語った。

ー400年前、鶴の神には七月の星の姫という愛する人がいた。彼女の名前は明星皇子ー

 

星が語る鶴の神は藤のトンネルの前で琴を奏でている。

琴は日本の昔の楽器で、藤のトンネルは鶴の神の楽園である。

彼の美しい歌声は天の国の至るところに響き渡っている。

彼は黄金の鶴の柄が刺繍された紺色の着物を纏っている。

明星皇子は美しい金色の着物で着飾り、白粉を塗った顔、真っ赤な唇、そして藤の花の髪飾りを付け。緑色の目は神であることを表している。

天の庭の歩道を優美に歩いてきた彼女は、悪戯で愛する人に目隠しをした。

 

 ー人間のために歌を歌い、幸福を祈願してあげる任務のため、二人の結婚式は延期しなければなりませんでしたー

 

星と明星皇子の顔が近づき、彼女は唇を彼の唇に近づけたが 触れることはせず、唇を彼の頬に寄せ、愛情を伝えた。

 

「ありがとう、星。例え、私達が離れ離れになって、こういう風にいられなくても、覚えていてね・・。」

明星は星の耳元に囁いた。

「私は私達の歌をいつも傍で聞いているのを・・。」

 

「待っていておくれ、明星。私が帰ってきたら、結婚をしよう。」

星は幸せそうに微笑み、明星を引き寄せ、抱きしめた。

 

 

その後ー月の村は猛吹雪に襲われた。

 

狐の神も七月の星の姫に恋をしていたので嫉妬をしていたのと人間達は自分よりも鶴の神を崇め、彼らのために豊作をもたらしてやった自分のことを忘れているのに怒っていた。

 

狐の神は鶴の神と激しく戦い、敗北した。

 

・・天の扉が閉まる直前、狐の神は魔術で悪霊・雪女を蘇らせ、鶴の神が天に帰るのが間に合わくさせるために月の村に危害を加えた。

しかし、雪女が鶴の神に恋をしたが、鶴の神からふられたため憎しみで町に猛吹雪を起こし人々を多数死滅させた。

 

人々の死に対し、狐の神は自分の非を感じ、雪女を退治したが、結局二人とも滅びることで決着がついた・・鶴の神は負傷したが将軍の娘の花の命を救い、生き延びた人々は跪いて彼を拝んだ。

 

「申し訳ない。皆に起こったこの禍は私にも責任がある。」鶴の神は村の人々の辛そうな目を見ながら言った。

 

「ですが、天の扉が閉まりかけています。急いでお帰りにならなければ・・。

将軍が代わりに心配をしなから言った。

 

空から道になって降りている黄金の光が天の扉が間もなく閉まることを表していた。

 

人間を案ずるあまり 鶴の神は帰らないことを決心した。

彼は川縁に跪き、刀を引き抜いた。彼は愛する人の最後の言葉に思いをはせた。

 

”ありがとう、星。私達が離れ離れになって、こうして互いに触れ合うことができなくても、私はいつもあなたのそばで私達の歌を聴いているのを覚えていてね。”

 

”待っていておくれ・・明星。私が帰ったら結婚をしよう。”

 

そして自らの手に刀を当て小川に血を滴り落とした。すると彼の緑の目の色が人間と同じ黒に変わり、神のオーラは徐々に消え失せてしまった。

 

 ー鶴の神は自らの血を川の水に混ぜ、人々がその水を飲んで病気を治すようにしたのです。そのため彼は神ではなくなり、

ただ死ぬことのない人間になってしまいました。

 

将軍はその自己犠牲に感動をし、お礼として彼を屋敷に住まわせ、神の秘密をずっと守ると約束しました。

 

また、天も慈悲を与えてくれ、もし狐の神との闘いで損傷した天の着物の箇所を黄金の鶴の毛で修復できれば、400年の内に天の扉が開く前に鶴の神は天に帰れるようにはしてくれました。ー

ー宮川の屋敷ー

襖が開き、将軍の宮川が娘を連れて入ってきた。

 

「お邪魔して申し訳ございません、皇子。」

 

「構いませんよ、宮川。私の方こそここに住まわせてもらって申し訳ないです。」

 

「皇子はここに住んでいる人というのではありません。皇子は宮川一族の恩人です。

もし皇子が花を助けてくださらなかったら、今頃花は・・・。」

 

花は星に笑顔で近寄り、手を握り、星を部屋から連れ出した。

 

「花ちゃん。」

 

 

 

「皇子が天から着て来た着物はすっかりだめになってしまったけど、私の家の宮川家は

着物を織るのが上手だから、皇子が天に帰れるよう前のように織り直すと約束するわ。」

 

将軍が入って来て、どのように同じに織り直しても皇子はそれを着て天には帰れないのだと説明をした。

 

少女は不可解に思った。星は喜んだが、少女の手を握り言った。

「あの着物は私が愛する人が織ってくれた着物で、黄金の鶴の柄は私一人のために刺繍してくれたものだからですよ、花ちゃん。」

 

「私達の一番いい絹糸でもその着物はできないの?」

 

「花ちゃんが織ってくれた着物を私は着ますよ。ですが、私が天に帰れるのは、明星皇子が黄金の鶴の毛で絹糸を作って着物に刺繍した同じ方法でなければならないのです。」

 

花は黄金の鶴を探し出し、その毛で刺繍をしてあげると約束した。

星はそれを見つけるのは難しいと反論したが、花は約束すると保証し、将軍も跪き同様に約束をした。星はそれに笑顔で応えた。

 

声の主は「これは不運な神の愛の伝説なのです。彼の歌声は天の愛する人の腕の中に再び戻れる機会を求めているでしょう。」とまとめた。

 

小説家はそれを聞いて可哀想になった。

若者は立ち上がり、茶代を置いて出て行こうとした。

小説家は急いで尋ねた。

「もう帰るんですか?まだあなたの名前を聞いてませんが・・。」

 

「私はたまたま通りかかったもので鶴の神の伝説をあなたに離して聞かせただけです・・

でもお忘れないでください、この伝説を人々が知るよう出版すると約束したことを。」

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宮川の屋敷ー

 

星は空の星を見上げている。突然、流れ星が流れた。

彼の目が輝き、愛する明星皇子と再会できる予感がした。

 

その時、田舎のスリンの家ー

 

スリンはそわそわと落ち着かず歩き回り、妻の出産を待っている。

流れ星と同時に大きな産声が聞こえ彼は興奮した。

いつも子供を取り上げに来てくれる産婆が3200gの元気な女の子だと告げ、何と名前を付けるか尋ねた。

スリンは空を見上げ言った。

「今夜は満天の星の美しく輝いている。お前の父親は、お前を”リンダラー”と呼ぶよ。」

 

 

それから12年後ー

 

リンダラーは可愛い少女に成長していた。

彼女は母親のドウアンダーオについて歩いている。

彼女には動物の声が聞こえる特別の能力があった。

彼女は桶の中の魚とカエルが逃がして欲しいと懇願しているのに落ち着かなかった。

それで母親にそのことを伝えた。

市場の人達はそれを聞いて驚いたようにリンダラーを見た。

ドアンダーオは彼女を心配して連れて帰ろうとしたが、リンダラーは我慢できず走って行って桶の中の魚とカエルを放してやった。

市場は大騒ぎになり市場の人達の怒号に少女は怖くなってしまった。

 

家に帰り、リンダラーはあの動物たちが助けを求めていたこと、そして動物達の声が聞こえる時いつも背中の後の痣が疼くことを母親に必死に説明した。

母親は少女の服を開けると星の形の赤い痣を見つけた。

 

「お母さんはあなたが賢くていい子だとわかっていますよ。あなたが何をしてもそれには訳があると信じています。でもこのことは私達二人だけの秘密にしておきたいから、そう約束しましょう。」

 

リンダラーは母親と指切りして約束をした。

ドアンダーオは娘が日本の伝説が大好きなのを知っていたので、そうした本を買って寝る前に娘に読んで聞かせてあげていた。彼女のお気に入りは鶴の神と狐の神の話でそのためリンダラーは絶対いつか月の町に行くというのを目標にしていた。

 

そしてその夢は叶った。リンダラーは日本の大学に入学する奨学試験に合格したのだ。

両親は彼女に自分たちのお金を足して持たせようとした。そうすれば月の町に遊びに行くためにアルバイトを必死にしなくてもいいと思ったからだが、リンダラーは二人の弟妹のことを気遣ってそのお金を受け取らなかった。

 

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宮川家の現跡取りの宮川アキラは熱心に剣道の練習をしている。

 

10歳の少女アユミが拍手をしながらやってきた。

「叔父様、とっても上手!絶対、優勝カップを取れるわね!」

 

「叔父さんが絶対優勝しなきゃといっても、戦う相手は強い人ばかりだって忘れないでくれよ。」

 

アユミは少し考えて、もし負けたら残念賞をあげると言った。

アキラは彼女のそばに行き、何の省がもらえるのか知りたさそうにした。

もしキスだけだったら毎日しているのでいらないとからかった。

 

「うーん、キスよりもっと嬉しいものだって保証するわ。でも私、残念賞はあげたくない。だって叔父さんは絶対勝つに決まってる。私のために優勝カップをもってきてね。

約束よ。」

アユミは指を挙げて約束の指切りをした。

叔父と姪は大きな声で笑いあった。

 

アキラの兄のアキハラがやってきて声をかけた。

「アユミちゃん、ここにいたのか。叔父さんのお邪魔はそこまでだよ。叔父さんは急いで車に乗らないといけないんだから。」

 

「え?僕ら一緒に行くんじゃないんですか?」

 

「すまない、アキラ。着物工場で至急の用事ができたんだ。それを解決して、後から応援に行くよ。」

 

アユミはアキラと一緒に行きたいと頼んだが、アキハラはアキラが彼女の面倒で集中できなくなると考えた。それで、アユミは叔父に必ず優勝カップを取るよう頼み、叔父と姪は仲良く抱き合った。

 

その頃、大学でーリンダラーはアルバイト求人雑誌を読んでいる。

突然、声がしてびっくりして振り返ると、やせ細った猫がこちらを見ていた。

友達は不思議に思い、どうしてあの猫を見ているのか尋ねた。

急いでアルバイトを探して、部屋代を払うお金を工面したほうがいい、電話をしても待たされるか支払い額に満たないかだと文句を言った。

 

「だったら、こうしない?いずれにしても今日空いてるんだから、このバイトを引き受けなさい。バイト代が少ないけど ないよりマシ。収入を得なさい。」

そう言って、友人は大学剣道大会の葉書を差し出した。

「今日、剣道の昇段の大会があるのよ。今、その事務の補佐をする人を募集しているから興味あるなら急いで登録してらっしゃい。」

 

リンダラーはその葉書を読んだ。

友人が勉強しに立ち去った時、野良猫が何か食べるものをくれとまた鳴いた。

彼女は誰かに誤解して見られたくなかったので 無視をした。

 

一方、アキラの方は、初戦を突破しようと戦っているところで

「宮川の刀さばきは戦うというより舞のようだな。」という冷やかす声が聞こえた。

 

アキラが振り返ると、そこには長年彼の一族と敵対関係にある小塚家のヒデノリがいた。

ヒデノリは喧嘩を売るような顔で、同じ剣道服を着ていた。

「どうした?小塚の人間が今日試合に出ると知って驚いたのか?」

 

アキラは何故驚くのかと言い返した。

ヒデノリは負けるのが怖いからだろうと煽った。

アキラは「勝ち負けが剣道の試合の場で決まるのであって、口だけの戦いで決まるのじゃないぞ、ヒデさん。」と言い返した。

 

「よし。お前が自ら引き下がるまで負けるのが怖くないというのなら、ダイスケの一族の太刀の腕前がお前たち宮川家は着物を織るのだけしかできないと思い知らせてやるさ。」

 

ヒデノリは睨みつけ、アキラの肩を押して自分のチームに戻って行った。

 

 アキラは歯ぎしりしながらそれを見送った。

それから間もなくして、アユミは電話でアキラが初戦を突破したのを聞いた。

彼女は、車の中で大喜びをした。

そして運転手の佐藤にアキラの応援に行くため急いで運転するよう言った。

 

車の両端は谷で アキハラの車が走っていると少年のお化けが突然現れた。

青い着物に短い髪の毛、真っ黒な目をした青白い顔に含み笑いを浮かべ鳥肌が立つほどの金切り声で笑った。

 

「いかなる手段を使っても宮川一族子孫代々に苦しみを与えて来い。」

ヒデノリの命令の声がした。

 

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昼休みの時間、アキラは目の前にある弁当に目をやった。

アユミが弁当を作ってくれたことを電話で話していた。

アユミはうまくできるまで何匹も魚を焦がしてしまったと文句を言っていた。

アキハラはアユミに、アキラは次の試合のために早く食事を追えないといけないので電話を切るように言った。

 

運転手の佐藤は顔を綻ばせながらバックミラーを見て、仰天した。

彼の主人二人の間に膝を抱えて座っている少年の妖怪が見えたのだ。

そのため車が少し傾いた。佐藤は動転したが、主人にそのことを伝える勇気がなかった。

 

アキラはアユミとの電話を切り、弁当箱に目をやるとそこから焼き魚が消えていた。

辺りを見回すと猫が加えて走って行った。

ちょうどその時、リンダラーが重たいクーラー水を抱えて来て置いたところ、魚にがっついている猫を見て 抱きかかえた。

 

「こんなところにいたのね。それでその魚をどこから持ってきたの?盗んできたんでしょう?どうしてそんなことするの?仕事が終わったら魚を買って食べさせてあげると言ったでしょう。こんなことするなんていけないわよ。人から泥棒猫に見られるでしょう。

今後こんなことしちゃだめよ、わかった?」

 

その時、「君か!泥棒猫の主人は?そうして猫とぺちゃくちゃしゃべっていて、違うとは言えないぞ。」というアキラの非難する声がした。

 

リンダラーは泥棒をしないように教えていたのだと言い返したが、

アキラは笑い飛ばした。

彼女は思わずそのことを口にしてしまい、言いたじろいだが、青年から馬鹿と言われ、

リンダラーは頭にきて

「あなたの方が馬鹿よ、たかが焼き魚1匹で。いいわ、私が魚代を払ってあげるわ!」

と言い返した。

 

「俺はお金が欲しいんじゃない。君の謝罪の言葉で十分なんだ。」

 

リンダラーは不満だったが、アキラが謝らないのは頭がいかれているからだろう、

それならそれで構わないと言うので、彼女は悔しいが歯を食いしばって謝罪をした。

青年は満足して胸を張り、立ち去って行った。

 

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星が着物に身を包み藤棚のトンネルの下で傘を持つ彼の愛する明星皇子の絵を描いている。

 

目を閉じると普通の人のようにスーツを着て藤棚の下に立っている自分の姿が浮かんだ。

 

手を伸ばし、花を掴もうとしたら 明星皇子が呼ぶ声が聞こえた。

 

彼は手を止め振り返ると、藤の花の下に着物に身を包んだ明星皇子にそっくりな女性が立ち、優しい声で言った。

 

「星・・私のことをまだ空の星の中に探し求めてくれて嬉しいわ。」

 

星が目を開けると、部屋の床に藤の花弁が落ちていた。

彼は不思議に思い、急いで部屋から出て行った。

 

それと同じ頃、佐藤がアキハラの車を運転していると子守唄が聞こえので、アユミに

退屈して歌を歌っているのかと尋ねた。

するとアユミは歌っていないと否定し、アキハラも娘は歌など歌っていないと言った。

突然、手が伸びてきて佐藤の手を掴んだ。

振り返るとそこには笑みを浮かべた恐ろしい顔の子供の妖怪がいた。

彼は悲鳴を上げた。

そのせいで車が蛇行し大きな木にぶつかり、エンジンから煙が出た。

佐藤とアキハラは即死だったが、アキラの助けを求めるアユミの呻き声がしていた。

 

星が屋敷の中に駆け込んできた。

 

生け花をしていた60代後半の宮川ミキが振り返り

悲鳴をあげた。

 

「皇子!どうして降りて来られたのですか?

誰かに見られたりしませんでしたか?」

 

星は藤の花弁を彼女に見せた。

ミキはこの種類の木は屋敷には植えていないので不思議に思った。

星は明星皇子からの合図で、彼女が助けに来る予感がすると言った。

ミキもそれを聞いて大喜びした。

 

その時、電話が鳴った。

ミキは怪訝そうに電話を見たが、星が電話に出るように促した。

 

電話に出た後、ミキはしゃがみこみ、涙を流した。

病院からの悪い知らせを聞いたのだ。

星は嘆き悲しむミキの肩を抱いて慰めた。

 

 

出典→Thairath


星は地下鉄の出入口から上がって来ると、雑踏の中で立ち止まった、

まるで予知夢の中にいるようだったので辺りを見回し、明星皇子に似た女性を探した。

横断歩道で、電話で元気にしていて何の問題もないと母親と話すリンダラーの声に、彼は急いで振り返った。

 

予知夢の中で車がぶつかりそうになるブレーキ音がしたが、星は気に留めず、女性を探し回り、ついに橋の上で立ち止まった。

 

目の前の川を見ながら呟いた。

「どこにいるのです?あなたを探してきたのですよ、明星皇子・・。」

 

星が諦めそうになっていると突然、演奏する琴の音がした。

振り返ると、寄付のための帽子を前に広げて琴を演奏しているストリートミュージシャンがいた。

星は急いでそちらに近づき、一万円を差し出した。

ストリートミュージシャンは目を丸くした。

 

それから星は、ミュージシャンの代わりにその琴で愛する曲を高らかに演奏した。

願わくば、明星皇子に聞こえるように、、と。

 

人々が演奏を聞きに集まってきた。

リンダラーは電話で友達にお金を貸してくれと頼んでいたが、断られてばかりでとうとう電池が切れてしまい、公衆電話を探した。

星が演奏している前を通り過ぎた時、星の目にリンダラーの姿がはっきりと映った。

彼女は誰かに見られているような気がしたのでそちらに目を向けたが、礼儀として微笑んだだけで立ち去って行った。

 

彼女が公衆電話で友人に電話をし、同じように断られ悲しそうに溜息をついた。

星はその話の内容をこっそり聞き、彼女を助ける方法を考えた。

 

一方、アキラは、マコトとリエを宮川の着物工場の視察に連れて来ていた。

マコトはこんな古い着物がまだ保存されていることに感動をしていた。

アキラは宮川の者達全員が織り継いでいかなければらない義務で、自分はもっとたくさん学ばなければならないことがあると語った。

リエは値打ちのあるこの着物を外国人に見せるファッションショーをしたいので、さらに詳しい経歴と製造過程を知らなければならない、それについて彼女の役に立つのはアキラを置いて他にいないと言った。

アキラはそれに対してただ微笑んだだけので、リエは面白くなかった。

 

二人だけになるとアイはアキラに、父親に彼を訪ねて来させてやったのに、アキラは興味を示さず、宮川家の状況を元通りにするだけだと主張したとリエが言っていたことを話した。さらに、もし外国人に見せるファッションショーをしたらヨーロッパ方面の顧客の強化になるはずだと言っていたけれど、アイもそのことには何となく不安を感じると言った。

 

ある夜、アユミが事故の夢を見て、父親の名を呼び震えながら泣いていると、涙をぬぐってくれる手があった。アキラだと思って目を開けると、彼女は驚いた。

「あなた・・誰?どうやって私の部屋に入ったの?」

 

「あなたは私のことを知っているんじゃないかな?ただ会ったことはないだけですよ。」

 

アユミはすぐに皇子だとわかった。

皇子は天守閣にいてばかりいるのを不思議に思っていたので、退屈しないのか尋ねた。

 

星は笑顔で、天国にいるみたいだから退屈しないと答えた。

アユミは天国の話を聞かせてほしいとせがんだ。

彼女は両親がどうしているのか知りたかった。

星はアユミの手を取り 彼女の左胸の上にそれを置き言った。

 

「あなたのお父さん、お母さんはいつもここにいますよ。だからあなたが悲しめばお父さんもお母さんも一緒に悲しみます。もしあなたが幸せならお父さんもお母さんも幸せになります。」

 

アユミはびっくりしてどうして知っているのか尋ね返した。

皇子は優しく微笑み、物語を聞かせてあげようと答えただけだった。

アユミは笑顔で喜んだ。

星が話して聞かせたのは七月の星の姫と愛し合う鶴の神の話で、人々に愛されている話だった。

 

アユミが眠ると星は部屋から出た。

ちょうどその時、その様子を目撃したアキラは怪訝に思い、後を付けようとした。

それをミキが遮り、皇子は姪に物語を話して聞かせただけだと言ったが、アキラは納得しなかった。

「ですが、僕はあの人は謎が多すぎます。もしあの人が私達の家の一員なら、そうあるえべきでは・・。」

 

「アキラ!おばあさんはいつもあなたに言っているでしょう?」

 

「はい。おばあさまはあの人は私達の一族の恩人だと僕に言っていますが、どんな恩がある人で、それだから私達みんな、何もかもあの人に従わなければならないのか知りたいんですよ。」

 

「義務は義務なのです。宮川の誰もそのような疑問を持つ者はいません。

そしてあの方のお世話をするのはおばあさんと私達一族の最も大事な義務なのです。

アキラ、おばあさまにこの大事な役目を果たさせてくれないかしら?」

ミキの眼差しは厳しく、アキラはそれ以上反論できなかった。

 

それでミキは甥の言葉を皇子に謝罪しに行った。

皇子はアキラは一族の長の責務を引き継いで神経質になっているのだと理解を示した。

ミキは星の表情が幸せそうなので不思議に思い、恋人に会えたのかと尋ねた。

皇子は笑顔で肯定したが、彼女はまだ彼を覚えていないので、彼女が明星皇子なのかどうなのかがわかる唯一の方法は彼女をここに連れてくることだと言った。


朝、ミキは甥達を探した。

ケイコはアキラはリエと一緒にアユミを遊園地に連れて行ったと報告した。

ミキは不思議に思った。電話をしようとした時、ナナがサダコの息子が至急の話で電話をしてきたと言ってきた。

 

今日、星はいつもの着物とは違う珍しい服装で出かける準備をし、希望に満ちた表情で明星皇子の絵を眺めていた。

そこに悲しそうな顔をしたミキが謝りに入ってきた。

「あの・・アキラはアユミを遊園地に連れて行ってしまったようです。私の不手際でございました。神社の仕事に熱中していたもので皇子がお話になりたいことがあるのをアキラに伝えるのが間に合いませんでした。」

 

「いいですよ、たったそれだけのこと。ミキの過ちでも何でもありません。

何百年も待っていたのですから、後数日待つくらい大したことありません。

それに、あの女性が明星皇子かどうかを試すために余所者をここに連れてくることなど、

私はアキラの誤解を招くべきではありませんし。」

 

ミキも同感だった。アキハラの死後以降、アキラは誰も信じなくなっていた。

星はミキが悲しそうなのを見て、何かあったのかと尋ねた。

「先ほど、サダコさんの息子さんから、サダコさんの様態が悪いと電話をもらったのです。皇子。」

 

星はミキとサダコの見舞いに出かけた。

サダコは宮川家の年配の機織り職人で、生涯をかけて星のために彼の着物の修復に努めていた。

今、彼女は年を取り、間もなく天寿を全うするところだった。

彼女はミキの顔を見ると、着物がまだ織り終わらないことを詫びた。

ミキは何百年も誰も織り終われないでいるのだから気にしないようにと慰めた。

サダコは大きく呼吸をして言った。

「私はこの話は誰にもしてはいません、ミキさん。宮川の秘密は秘密のままです。」

 

「ええ、サダコさん。皇子はご存知で、この贈り物を私に持たせたのですよ。」

そう言って、皺枯れたサダコの手に鶴の折り紙を持たせた。

「皇子は私に、皇子の望みが叶う時が近づいたことをあなたに伝えるようにとおっしゃいました。」

 

「あの方に皇子の歌が届いたのですか?」サダコは涙を流して喜んだ。

 

ミキはきっとそうだと答えた。サダコは喜び、手の中の鶴の折り紙を見つめた。

すると手の中の折り紙の鶴が純白の鶴に変わった。

彼女は笑顔で自分の時が着たのだと悟った。

 

・・・道の上、まるで時は止まったように動かない人々の中に星が立っていた。

サダコが近づくと彼の体から光が差しているのが見えた。

神であることを表す緑色の目をした彼が手を差し伸べ、送っていくと彼女に言った。

 

「私はずっと夢見ておりました・・時が来たら、私にも皇子の本当のお姿が拝めると・・

何とありがたいことでしょう・・。」

 

「それはあなたがとても良い人だからですよ。あなたが生涯をかけて善行に努めてきたことが、あなたをこうして私に会わせたのです。そしてまた会いましょう。」

 

サダコは感激の余り涙が込み上げ、星の手を握りながら言った。

「はい、皇子。皇子の訪れた希望が叶うのをお祈りしております。

どうか愛するお方と再会なさいますように。」

 

星はサダコの手を握り、神々しい光の道へ歩いて行った。

 

それから全てが通常通りになり、人々も歩き始め、星は空を見上げていた。

ミキは涙を拭きながら近づいてきた。

星はサダコは安らかに逝ったのだと慰めたが、ミキは堪え切れないまま泣きじゃくるので

星は慈しむような笑顔で言った。

「子供の頃から年を取るまでずっと泣き虫のままなのですね、ミキは。」

 

「だって、本当に耐えられないのです。ずっと一緒にいたのに亡くなって別れなければならないなんて、とても平気ではいられません。」

 

「私もここにいる間ずっと何人もの宮川の善良な人達の死を看取って来て、

とても平静ではいられません。ですが、そうした善良な人達が私の神としての姿を見ることができ、そして私も彼らを送る役目を果たせたことを誇らしく思います。」

 

「でしたら、私は徳が足りないのですね。もし皇子の願いが叶ったら、皇子は私の番が来る前に天へお帰りになるのですから。」ミキが悲しそうな顔をした。

 

「私はあなたを送らないのを恐れているのですか?ミキ。私はあなたは年を取り易くても、死ににくいですよ。まだまだ長生きします。私の言うことを信じなさい。」

星はからかうように微笑んだ。

ミキはピタッと立ち止まり横目で星を見て、プンプンしながら星の後をついていった。

 

出典→Thairath


宮川の屋敷の中ー

リンダラーは自分は寝る前に物語を読んでそれで寝ぼけて庭の中に子供を見たのではない、本当に子供の声と血の滴を見たのだと説明するために星の後をついて歩いていた。

 

「ここには幽霊の話があるでしょう?皇子。」

 

星はそれには答えなかったが彼女の手を取り、その手の中に背守を渡した。

背守とは日本の魔除けのお守りで、硬貨のような丸い形で、表は黄金の糸で刺繍された鶴の柄で、裏には真っ黒だった。

リンダラーは興奮気味にそれを見た。

 

「綺麗な背守。日本に来たばかりの時、私の友達のサエちゃんが私に背守をくれたことがあったんです。だから父のお守りをお礼にあげたんです。」

星が不思議そうな顔をしたので、彼女はさらに詳しく説明をした。

「タクルという、日本の背守と同じようなタイのお守りです。同じように魔よけとか厄除けのために持つものなんです。」

 

星は笑顔で納得した。

「背守はあなたからあらゆる危険を祓います。これをあなたにあげます、光。」

 

彼女はお辞儀をしてお礼を言った。しかし顔をあげると、星はもういなくなっていた。

彼女は不思議になって辺りを見回したが、ちょうどやって来たケイコに夜中に何をうろついているのか咎められた。

リンダラーは皇子と話をしていたと言ったが、ケイコは皇子が降りて来て話をしたことを信じず、嘘だと言って部屋に帰るよう追い払った。

リンダラーは部屋に戻り、自分の目がおかしくて子供が見えたのだろうか?と考え込んだが、背守をくれた星に笑みがこぼれ、感謝した。

その頃、ヒトシはヒデノリにまたいなくなったことを叱られていた。

 

ヒトシはアユミと遊びに出かけていたと説明した。

 

「アユミ、、?あのアキラの姪のか?」

 

ヒトシは頷いた。

 

「なら、お前はアユミの世話をしに来ている女に会ったな? そいつはどんな奴だ?」

 

ヒトシは彼女は優しい人で、オモチャをくれたと言った。

そういうことばかりを繰り返し言うのでヒデノリは頭に来て、たまには自分にもあげさせたいんだろう?!と言った。

ヒトシはうんと頷いたので、ヒデノリは寝ぼけてろ!さっさと消えろ!と怒鳴った。

ヒトシは怖がり、壁の中に這い逃げていき、ある暗い部屋に出て、部屋の暗い片隅で膝を抱えて泣いた。

 

顔を上げ辺りを見回すと、段飾りに小さな人形がたくさん置いてあるのが見えた。

彼はそこへ這って行き、その中の一つの雛人形を摘まんで見るとその人形に目が釘づけになった。その顔がアユミとそっくりだったのでそれと遊んだ。

すると、思いもよらないことに、その人形の赤い口が微笑んだので彼はびっくりし、

それと同時に、ダイスケの咳ばらいがした。

ヒトシは仰天し、人形を床に落としてしまった。

人形の台座についていた魔よけの布が剥がれ落ち、女のけたたましい冷酷な笑い声と共に人形から白い煙が噴き出した。

ヒトシはつま先が急に冷たくなったので上を見ると、何かに対して目を大きく見開くと

恐怖で震えあがり、慌てて逃げてしまった。

 

ダイスケが部屋の前を通ると何かいつもと違いようだったので、襖を開け中に入り、部屋の電気をつけて辺りを見たが、何も異常がなかったので電気を消し、襖をまた閉めた。

しかし、まだ微かに冷酷な笑い声はしていた。


 

 

夜の料亭ー

 

雪は美しい芸者で、真っ白な白粉で化粧をし、口半分に紅を差し、美しく舞を披露している。

 

リエの父親であるマコトはビジネスの友人と酒を酌み交わし、その舞を満喫している。

 

リエはプライベートな関係を匂わせる目使いでマコトと視線を合わせた。

その後、雪は日本流の見事なお手前でマコト達に茶をたてた。

マコトの友人たちは口々に彼女を褒め称えた。

「君はこれまで飲んだお茶の中で一番美味しいお茶をたてるね。」

 

雪は

「おもてなしの気持ちがこもった一服の茶を召し上がれば有難い気持ちになられて、話も弾むものですわ。」と、艶のある笑顔で言った。

 

「道理で。今、私達は仕事の話より、君と話がしたくなったよ。」

友人の一人が、後日、雪とだけ話に来ると言った。

しかし雪は「申し訳ございませんが、私、本日が最後の仕事にしようと思っておりますの。」と恥じらいながら言った。

 

マコトと友人はびっくりして固まった。

雪はマコトに流し目をして、愛する人の世話をするからだと言った。

その人は仕事のし過ぎで休む時間もないのでその人に十分尽くしたいのだと言った。

マコトの友人はその相手は誰なのかと頻りに尋ねた。

その相手を羨むと同時に、雪のことを祝ってくれた。

雪は微笑み、マコトの方に目を向けたが、彼は面白くなさそうな顔をした。

 

会合の後、控室でマコトは雪の手首を強くひっつかみ、自分の女だと宣伝しようとしやがってと責めた。

雪は彼にしなだれかかり「私はわかっています。私達は無関係で、愛し合っていることは誰にも知られないようにすると約束しました。ですけど、もう我慢できません。

あなたを想いながらの一人寝も、あなたがいつ尋ねて来るのか毎日待ち続けることも、

あなたが去る時には死にそうな気持になるのももう嫌。

仕事を辞めてあなたと暮らして、あなたのそばで尽くすわ。どうかしら?あなた。」

雪はマコトの顔を撫で、キスをしようとした。

マコトはうっとりしたように見せかけ、思いっきり彼女を突き飛ばした。

「要らぬわ!」

雪は飛ばされテーブルにぶつかった。

マコトは指差しながら、自分達の関係はもうこれまでだ、と言った。

雪は慌てて彼の足にしがみつき、自分が何か悪いことをしたのか?と尋ねた。

彼は誰にも束縛されたくない、もし合意しあった通りにできないのならもうやっていけないと怒鳴った。

彼女は声を震わせ、自分たちは愛し合っていたのではないのか?と尋ねたが、彼はそれには答えず、顔を背け、出て行った。

雪は崩れこんで泣いた。

 

 

その夜、雪が泣きながら道を歩いていると、飲み屋から出てきた酔っぱらいの男から道端に引っ張り込まれ強姦されそうになった。

彼女は助けを求め大声で叫んだが、周囲には誰もいなかった。

しかし、突然、白い煙が地面を這うように立ち込め、男の足に触れた。

男は急に寒気を感じ、思わず動きを止めた。その隙に雪は持っていたバッグで男を払いのけ、走って逃げた。

暴漢は急にこんなに寒くなったのに困惑したが 恐ろしい笑い声がするとともに、突然、バタリと倒れた。

 

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 明け方、過去の忘れられない事故の夢を見て星は汗をかきながら眠っていた。

ミキが襖を開けて入ってきた音に、急いでとび起きた。

星は目を覚まし、何百年も前に起こった吹雪で多くの人々が亡くなり、自分は将軍の娘を助けた夢を見ていたことを話した。

 

「何百年も前の出来事を 皇子はお忘れになっていたと思いましたが。」

 

「多くの月の町の人々の命が失われたのですから、忘れるなどできませんよ、ミキ。」

 

「ですが、雪女の憎しみが人々の命を奪ったので、皇子のせいではありません。

皇子があの女を愛せないのを、あの女こそ受け止めるべきでした。」

 

「ありがとう、ミキ。あれは私の悪夢だけで、悪い兆しでなければいいが・・。」

 

「何でもありませんよ。皇子。もし雪女はまだ生きていたとして、皇子が普通の人間になっているのを知られ、伴侶にと迫られたら、一巻の終わりですね。」

「全く、ハンサムな星に生まれて、ここまでよりどりみどりというのも、大変ですよ。」と冗談を言った。

 

「本当に、ハンサムなのも困りものですわね。」ミキは口もとを手で隠し、笑った。

「それよりもリンダラーの話ですが、以前打ち合わせした通り、今日、私に手配させようとお考えですか?」

 

星はじっと黙って描かれた明星皇子の絵を見ながら考え込んだ、、。

 

その頃、リンダラーは部屋で眠っていた。

寝返りを打つとアキラが仁王立ちしていたので、飛び起きた。

そして、中にどうして入ったのかと尋ねると、彼はここは自分の家なのだから、どの部屋にも入れるのだと反論し、

だが、今回ここに来たのは、何故夜中に彷徨いていたのか聞きに来たからだと言った。

彼女は話の伝わり方があまりにも早いのを知り、顔をしかめた。

アキラは家の主人なので、ここの家のことは何でもわかるのだと言った。

それでリンダラーは物音を聞いたので外に出てみると星にばったり出くわし、さらに彼は心配して御守りをくれたと話した。

もし信じないなら皇子に直接聞けばいいと言い、風呂に入りたかったので、彼を部屋から追い出した。そして彼が出て行く前にリンダラーは念を押した。

「あなた!たとえここがあなたの家であっても、今は私のプライベートルームなんだから、勝手に入らないで!!以上!」

 

それから、リンダラーはアユミの世話に降りて行き、彼女の症状を診るため、足を少しずつ挙げて、各部の筋肉をチェックしながら痛みはないか尋ねた。

時々、アユミは叫び声を上げ、アキラが助けに行こうとしたが、ミキがそれを制した。

アユミはリンダラーにまた歩けるようになるか尋ねた。

 

「歩けるようになるわよ。アユミちゃんの筋肉はあまり使ってなかったから、少しずつトレーニングして鍛えて行かないといけないわ。

もしアユミちゃんが私と協力してくれたら、あなたがまた歩けるようになるとお姉さんは約束する。でも、これからお姉さんがあなたの筋トレを手伝う時、もし痛かったら、どの程度痛いかお姉さんに言ってね。」

 

アイはアキラにこのリハビリ士はプロとしての腕前があり、他の人よりも優秀に見えると囁いた。

アキラは黙ったままだった・・。

 

アユミはしょんぼりときっとそれは無理だとこぼした。

何度も試してみたけれど、まるで歩けず、もう一生歩くことはできないと言った。

 

アキラはそれを聞いて姪が可哀想になった。

「もし今まだ歩けないなら、まだ練習しなくていいよ。お前が歩けなくても、何てことないさ、叔父さんがお前の面倒を見るさ。」

 

「何ですって?よくもそんなことが言えるわね?私は今アユミを励ましてるで、やる気をなくさせてるんじゃないわ!」

リンダラーは叱りつけた。

 

アキラは姪を強要したくないと言うと、リンダラーはこんな叔父がいるからいつまでたってもアユミが歩けないのだと反論した。

他の者達はまさかリンダラーがアキラに刃向うとは思わず、真っ青になった。

彼女はアユミのカルテを見ると彼女は良くなっているし、そうでなくてもちゃんと真剣にリハビリをしていれば、彼女はもう歩けていたのに、と繰り返し言った。

彼が少女に自分のことは自分でさせないままでいて、もし彼が段階を踏んで治療をさせればアユミは歩けるのに、と言った。

 

「歩けようが歩けまいが 君にはちゃんと給料は払って稼がせてやるよ!」

アキラは逆切れした。

 

「馬鹿にしないで!アキラさん。あなたのお金で全てを買えると勘違いしないで。

私がここに来たのはお金のためじゃないわ。またアユミが歩けるよう助けたいからよ。

もしあなたがまだ私にあなたの姪子さんを助けさせたいなら、どうか邪魔しないで。

私に役目を果たさせてくれませんか?」

 

アキラは反論しようとしたが、ミキがそれを制し、リンダラーに彼女は喜んでリンダラーの思う通りに治療をしてもらいたいと言った。

リンダラーはお辞儀をしてお礼を言った。

ミキは話がすんだら自分と話しに来るようと言った。

アキラはイラつきながらそれを見ていた。

 

それ後、リンダラーはミキに会いに行った。

ミキは天守閣の上へ行き、皇子に会うようにと言った。

リンダラーは家の者達はあの上に行くのは禁じられていたので不思議に思った。

ミキはリンダラー一人だけが許可されたのだと言い、手招きして行き先を案内した。

 

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その頃、アキラは鶴の神社にお参りをして仕事に出かけようとしていると、星が突然現れ挨拶をした。

 

アキラは皇子がここに来たことを不思議に思った。

 

星は家の者達がそれぞれの仕事で忙しそうなので、掃除の手伝いに来たのだと言った。

 

アキラはもし祖母が知ったら家の者達を咎めるだろうと言った。

 

「大丈夫ですよ。私はミキに言ってありますから。」

 

「祖母は皇子のおっしゃることは何でも従いますよね。それがどんなことであっても、

祖母は決して逆らいません。」

 

「それは私とミキは長いつきあいで、互いに信頼しあっているからです。

決してあなたがお考えのように、私がミキを強要したり、感化したりしてのことではありませんよ、アキラ。」

 

「僕はそのようなことは考えておりません、皇子。」

 

「もしあなたがそのようにお考えでなかったのでしたら、謝ります。

いずれにせよ、私は単なる居候、あなたはこの家の主ですから。」

星は笑顔でお辞儀をした。

 

 

出典→Thairath

 

櫛田が剣道の面を外すと、アキラの方を向いた。

その顔が浮かない顔をしていたので、どうしたのか?とアキラが尋ねた。

 

「なんというか・・お前に謝らないといけないことがある。さっき別の会社からコンタクトがあって、そっちの条件がいいから俺はその申し出を受けることにしたんだ。」

 

「どうしてそんなことを!?昨日の夜、僕と働くと言ったじゃないですか?」

アキラはびっくりした。

 

櫛田の練習相手をしていた者が面を取ると、それは嘲笑うような顔をしたヒデノリだった。

「ビジネスの世界は何が起こってもおかしくないぞ。アキラ。

今回のことは今日お前が俺にくれた誕生日プレゼントということにしておこう。」

 

アキラは怒りが込み上げ、ヒデノリはそれを煽るような顔をし、宮川のような่世間知らずな奴とより、小塚一族と働くほうがいいのだと馬鹿にした。

アキラは怒り心頭になった。

「人のものを横取りするのは小塚の十八番だから、貴様らがこんなひどいことをするのに驚きはしないさ。」

 

今度はヒデノリが怒る番だった。竹刀を振り下ろしたが、アキラの方が素早く、櫛田から奪った竹刀でそれを受け、ヒデノリを押し、後退りさせた。

突然、ヒデノリは自分に自分に何か起こったのを感じた。

彼はアキラの竹刀を素早くかわし、通常より素早く動けるようになったので、反撃をしてアキラの方が形勢が不利になった。アキラの汗が地面にしたたり落ちた瞬間、ヒデノリにはその音が鼓膜が痛くなるほど大きく聞こえ、集中力が途絶え、その隙を見て、アキラはヒデノリの喉元に竹刀を突き立てることができた。

そこに櫛田が喧嘩の仲裁に入ってきた。

 

「覚えておけ、ヒデ!小塚が宮川に手出しできる日などないということをお前にわからせてやる。」アキラは面と向かって言い、ヒデノリの喉元から竹刀を収めた。

そして櫛田を責めるように睨んだ。

 

櫛田は視線をそらし、アキラがその場を去って行くと、ヒデノリに急いで駆け寄り、

おかしく見えたが、どうかしたのか?と尋ねた。

ヒデノリは自分がどうしたのか自分でもわからなかったので、返事をしなかった。

 

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マコトの部下が3人のヤクザに始末をさせていた雪の体を、再度葬るため病院に引き取りに行った。

雪が雪女に乗り移られていることを誰も知らなかった。

霊安室に着くと、雪に魂を吸い取られ、凍らされたように三人のヤクザが死んでいた。

マコトの部下はびっくりしてその場から逃げ、上司に報告をした。

マコトは帰ってきた部下達の大騒ぎぶりが落ち着いてからやっと、雪を始末したかを尋ねた。部下が答えようとした時、雪が追いかけて来て部下を捕まえ魂を吸い取った。それはとても恐ろしい光景だった。

 

リエの仕事部屋ー彼女は急に寒気を感じ、使用人を呼んで、誰かが空調をいじったんじゃないかと文句を言った。

使用人は首を振り、急いで空調が壊れていないか確認すると言った。

そこで、リエは父親のことを尋ねた。

使用人は、今、あのいつもの女が客で来ていると言った。

 

その頃、マコトは恐ろしい状態で乾燥したように死んでいる部下達を見ていた。

「お・・お前は・・雪じゃない。」

 

「どうして私が雪じゃない?私じゃないか・・雪・・ひたむきに愛を信じ、だが、結局、死んでしまった、、、ひどい目に遭わしたお前がその相手の愛のせいでだろうが。

新江波マコト。ヒヒヒ・・。」

 

「雪は死んだのなら・・それで・・お・・・お前は誰だ?」

 

雪は恐ろしい笑い声をあげ、手を伸ばし、マコトの首を絞めた。

マコトはもがき苦しんだ。

雪は口を開け、その魂を吸い取ろうとしたが、急に何かを思い、彼を放した。

マコトは這って、部屋の隅に逃げた。あまりの寒さで彼の口から出る息が白くなった。

 雪は彼にまだお前は死ねない、雪にしたことを償わせるために生かしておくと言った。

これは自分が望むことではないが、彼を自分の命令にだけ従う下僕にするためだと言った。マコトの顔は青ざめた。

 

「私は今、ある者を探している。お前はそれを助けろ。できるな?」

 

マコトが答えようとしていたのを、リエのドアをノックする音で中断された。

「お父様・・?お父様、、あの女、どうして戻ってきたの?お父様!」

 

雪が扉の方を振り返った。マコトは動揺した。

「俺の娘に手を出すな!俺はお前の言うことは何でも聞く。お前の奴隷になる。

だから俺の娘に手を出さないでくれ、お願いだ。」

 

雪はマコトの方に振り返り、いい気味だというように嘲笑を浮かべた。

 

マコトは表に出て、雪をホールの方へ引っ張って行き、雪に構うなと命じた。

リエは納得せず、あの女を始末すると言ったではないか?それともあの女は復讐に戻ってきて、彼に言うことを聞かせるようにしたのか?と言い返したが、マコトは何も聞かずに言われたとおりにしろと逆らおうとするリエの肩を掴み怒鳴った。

 

「言った通りにしろと言ったのだ。でなければ、この家から追い出すぞ。

いいな、絶対に雪に構うな、離れてろ!絶対に近づくんじゃない!」

 

「離れてろ?それって、あの女はここに住むということ?」

 

マコトはそれには答えず、言ったことを覚えていろとだけ念を押した。

 

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風呂を済ませ、リンダラーはアユミの元へ行くと、彼女は星と遊んでいた。

星は彼女にそれぞれの音を出すために水の量を段々と減らし並べてあるガラスコップから音楽を奏でることを教えていた。

 

「まず指を濡らしておきます。コップの口の周りを回るとき、滑ってその音が出ます。」

星はアユミの手を取って最初の音から順に始めていった。

アユミは興奮していた。

 

リンダラーは嬉しそうにそれを聞き、星のくつろいだ様子に見とれた。

アユミはそれを自分でできたのに大喜びで、万歳万歳とはしゃいだ。

 

星は「わかりましたか? 難しすぎることや、アユミはできないことは何もないのです。

もし本当に一生懸命にやれば、アユミは何でもできます。また歩けるようになることもですよ。」

 

「本当に?皇子。」

 

「本当です、知っていますか?リンダラーお姉さんには特別な魔法があるのを。

もしアユミがお姉さんを信じて言う通りにしたら、その魔法でアユミをまた歩けるように必ずしてくれます。」

 

リンダラーはそんなことを言うのはよくないと異議を唱えた。

星は本当だと主張した。

彼は本当に彼女はアユミを魔法にかけたように治してくれると信じていると言った。

彼女は首を振った。

「そんな大げさです。アユミはそう信じ込んでしまって、もし私が彼女がまた歩けるようにできなかったら、私のことをお姫様のように見てたのが、魔女に変わってしまうじゃないですか。」

 

「そんなことないわ、リンダラーお姉さん。皇子はもし私は一生懸命頑張ったら、アユミは何でもできると言ったのよ。だったら私達力を合わせて一緒に魔法を使いましょう。」

 

リンダラーは感激した。

アユミはカバンを開けて、キットカットを取り出し、車椅子を自分で押して、コップを使った演奏を教えてくれたお礼にそれを星にあげた。

星はそれを口にして、今までに見たことがないように不思議がった。

 

「美味しいですね、光。普段、このような今風のお菓子は食べたことがありません、」

 

リンダラーは今風のお菓子という言葉がおかしくて、笑いをこらえた。

星は通常、ミキが作ってくれる団子か餅しか食べないと言った。

彼女はミキさんが拗ねてしまうまで今風のお菓子にハマらないよう気を付けてくださいと冷やかした。

 

「その通りです。ミキの餅が後家さんになってしまいますね。」

星は美味しそうにキットカットをかじりながら笑顔で言った。

 

 

出典→Thairath

ナナはリンダラーをミキに会いに連れて行った。

ミキはカラフルな木綿の生地のものを選び並べていた。

リンダラーが入ってきて、美しい着物の生地だとほめた。

ミキは首を振って、これは着物の生地ではない、着物の生地は絹でなければならない、と言って それを掴んで差し出した。

これは浴衣に向いている木綿の生地で、通気がいいので着ても暑くなくていいと言い、

彼女に選ぶように言った。

 

リンダラーは自分の持っている物の方がアユミの世話をする時に便利だからそれを着ると言うと、ミキはまた首を振り、「私達は七夕の夜にあなたを働かせるほど意地悪ではないですよ。さあ、選んで。私からの誕生日プレゼントということですよ。」

 

ナナはミキを悲しませないようにと勧めた。

リンダラーは一番地味な桜の柄の見て、これでいいと言った。

ミキはナナに笑顔を向けて、それから二人でリンダラーに着物を着せた。

 

皆、七夕祭りに行く準備をしていた。アユミでさえも浴衣に身を包んでいた。

アキラは露に濡れてはいけないともう一枚、羽織物を着せようとしたが、アユミは着たがらなかった。アイは暑いからだろうと言った。

しかしアキラはもし羽織を着ないのなら出かけさせないと命令した。

アユミはがっかりした。そこへ、星はやってきて言った。

「叔父さんの言う通りになさい、アユミ。」

 

皆、星を見て、畏敬の念を持って、後へ下がった。

星はアキラから上着を受け取り、アユミに羽織らせ囁いた。

「まず、これを着て、それからこっそり脱げばいいですよ。」

アユミは笑顔で素直にそれを着た。

アキラは自分の愛する姪からお株を取られたことが気に入らないようにその様子を眺め、

ナナにリンダラーに急ぐよう言うようにと命じた。

 

アユミがリンダラーが来たと指を差した。

皆が振り返ると、そこに彼女を連れてミキがやってきた。

ピンク色の桜の浴衣に身を包み、髪を上げ、美しい顔を露わにしたリンダラーの姿に皆、

驚きを隠せなかった。それはリンダラーのことをあまり好きではないケイコでさえも同様だった。

アユミは車椅子を押して、近くまで行き、彼女に自分が描いた誕生カードを差し出し、彼女に抱きついた。

リンダラーは感動した。

アキラはその場の雰囲気をさえぎり、さっさと出かけるぞと言った。

そしてアイに向かって、本当にいかないのか?と尋ねた。

アイは体調がすぐれないので行っても楽しくないとしどろもどろに言った。

 

しかし、皆が出かけてから、前方に墓場があり、恐ろしい雰囲気の陶器の橋までヒデノリに会いに行った。

アイがそろりそろりと階段を下りていくと、本当に暗い場所にヒデノリが座っていた。

彼女は喜んだが、ヒデノリは自分がここにいるのをどうして彼女が知っているのか不思議がった。彼女は以前彼が祖父と喧嘩をしたときには、ここに来ると言っていたのを覚えていたからだと言った。そして今、何か気分の悪い話でもあるのか?と言いながら彼に近づいて行ったが、ヒデノリは近づくなと怒鳴った。

「こっちに来るな。あっちへ行け。俺は誰にも会いたくない、一人でいたいんだ!」

 

「どうして私のことを他人のように言うの?あなたのことを愛しているのよ。

あなたがどうであっても、何があなたにあっても、あなたのそばにいるつもりなのよ。」

 

ヒデノリはそれを聞き入れず、彼女を故意ではないが強い力で突き飛ばした。

アイは遠くまで飛ばされ、振り返ると彼はもうそこにはいなかった。

 

鶴の神社の周囲には、七夕祭りにやってきた人々がお参りをして、短冊にお願い事を書いて、笹の枝に吊るしていた。

 

アキラの一行がやってきた。リンダラーは星と一番後ろを歩いている。

星は彼女に痣が痛むかと尋ねた。彼女も痛くないのが不思議だった。

彼女は医者が言ったように気のせいなのかもしれないと言った。

星は笑顔で

「それか七月の星の姫が誕生日プレゼントにくれたことなのかもしれませんよ。」

と言った。

「だったら、この症状がこの先もずっとなくなるのをお願いしたいです。」

リンダラーはそのことを願い事に書いた。

アキラがその親しげな二人を見ていると、アユミが自分の短冊を笹の枝に吊るしてくれと頼んだ。

アキラは振り返って、何をお願いに書いたのかと尋ねた。

アユミはお父さんとお母さんが天国で幸せでいますように、と書いたと答えた。

星とリンダラーは慈しむように少女を見た。ミキは涙が出そうになった。

 

「アユミはいい子だから、天の神様がお前のお願い通りのことをしてくれるよ。

叔父さんが一番高いところに吊るしてあげようね。そうしたらアユミのお願い事は神様と一番近いところにあるからね。」とアキラは姪の頭を撫でながら言った。

 

リンダラーは自分の手の中の短冊を見て、こっそりお願い事を変えた。

彼女はそれを吊るして立ち去ると、アキラは彼女が何を書いたのかこっそり読んだ。

するとそこには

”アユミの怪我が治ってまた歩けるようになりますように”とあった。

アキラはそれを読み、彼女に対しての印象が少し良くなった。

 

その夜、皆、屋台を楽しみながら歩いていた。

ペンラムとキィオはリンダラーを見つけると大喜びで声をかけた。

アキラと星を見ると、二人のハンサムな男性に照れ笑いをし、それぞれ懸命に自己紹介をした。

二人の女性はリンダラーを彼女たちのマッサージ店でのタイ人のパーティに誘った。

リンダラーはアユミの世話があるので躊躇すると星が滅多にタイ人には会わないのだから行きなさいと言った。

アキラとミキは彼が生かせるとは思わなかったのでびっくりして振り向いた。

ミキもそれでリンダラーに今日は彼女の誕生日なので遠慮せずに行きなさい、アキラも一緒に行かせますからと言った。

 

「ですが、リンダラーは皇子に一緒に行ってもらいたいと思いますが。」とアキラは異議を唱えた。

 

星は彼に行くように、自分はミキと一緒にアユミの面倒を見るからと即答した。

 

別れてからミキは星にこのことがいい結果を生むかと尋ねた。

二人が仲良くなるか、さらに険悪になるか・・。

星はリンダラーの良さをきっと目にして、彼女も彼の良さにも気が付くだろうと言った。

 

「もし皇子がご心配なさらないのでしたら、私も安心です。ところで、今日、リンダラーは痣が痛まないように見えますが、どうしてなんでしょう?」

 

「それは明星皇子が彼女に、ミキが思うように自分で答えを見つけさせたいからです。」

 

「その答えとは・・皇子・・。」

 

「そうです。それは光が私に会ったからです。それこそ、背中の痣はこれまでのように

どうして痛まなくなったかの答えです。あとは光がどうその答えを見つけるかです。」

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美しい七夕祭りの雰囲気にあふれた月の町の歩道ー

リンダラーは興奮しながら歩いている。アキラは彼女のその様子を全くくだらないことののように見ていると急にリンダラーに写真を撮るように言われた。

彼女はおかしなポーズを取るので、彼は恥ずかしくないのか尋ねた。

彼女も恥ずかしいから早く写真を撮るように言った。写真を撮り終わると彼女はカメラを取り返し、撮った写真を見た。

すると突然、背中に歩行者がぶつかり、リンダラーはアキラを抱き付くことになった。

彼も一瞬、いい気持ちになったが、我に返り、わざと冷やかすようなことを言った。

「あとどれくらい僕に抱き付いたままでいるつもりだ?僕に魅了されたのか?」

 

リンダラーは急いで離れ、何を考えているのかと聞いた。たまたま下駄がひっくり返って転びそうになっただけだと言い、転ばずに済んだ彼女は彼を押しのけた。

「やめて。私は大丈夫なんだから・・ああ、私の魅力に惑わされて、スケベなことでもしようと思ってるんでしょう?」

 

「僕は変な奴には興味ないね。」アキラは肩をすぼめながら言い、歩いて行った。

 

リンダラーは「あなた!私のどこが変なのよ?全くあなたって大人しそうなのに、口が悪い人ね!」

 

二人はマッサージ店の前に着くと、ペンラムとキィオはまだ帰ってないようだった。

それで店の前で待っていると リンダラーは突然寒気を感じ、不思議に思った。

道の反対側に白い着物に、赤い唇、漆黒の長い髪の毛の雪が歩いていた。

 

マコトが便宜を図りつつ、ついて行くのを見て、後ろを歩くリエは面白くなく、父親に自分は先に帰ると言った。

マコトは娘の失礼を謝罪した。

 

雪は自分の探す相手がここから遠くはないところにいる感じがした。

 

アユミとミキも寒気を感じ、着物の襟元をつめた。

星も何か予感がして、吊るしてある短冊を見ると、それには「私のところへ」と

書かれてあった。そしてそれが明星皇子の声になり「私のところへ来て、星・・。」と言った。

その悪い知らせを理解し、ミキに向かってリンダラーを急いで探さなければ、と言った。

ミキはびっくりした。

 

星はアユミの車椅子を押しながら そこらへんの人達にペンラムのマッサージ店の居場所を尋ねながら歩いた。

物売りの一人の女性が寒さで震える手で方角を指した。

 

一方、マコトは雪に探している人はどんな顔をしているのか尋ねた。それがわかれば部下に探させると言った。

 

女は首を振った。

「あれは普通の人間じゃない。お前達はあれの本当の姿を見抜けぬ。」

 

「普通の人間ではない?と言うことは、妖怪なのですか?あなたみないな。」

 

「あれはお前の考えるよりもっと高尚なのだ。だが、今は普通の人間になっている。そして、私の強まった力があれの形跡を捉えてくれるだろう。」

雪はマコトをぐっと睨みつけながら言った。

 

人が行き交う道で、星は空を見上げ輝く星を見ながら心の中で呟いた。

「私に教えてくれ、明星皇子…光はどこにいる?」

 

その時、流れ星が落ちた。星は急いでその方向へ歩いて行った。

ちょうどその時、ミキは星の目が青色に変わったのを見た。

辺り一面がまるで動きを止めたようだったが、星だけが動いていて、ミキは彼はやはり鶴の神だと確信した。

 

女は飛び上がり、彼を探しに行こうとしたが、力尽きて地面に落ちて転んだ。

真っ赤な唇が色褪せた。マコトは慌てて彼女を支えながら言った。

「力を使いすぎです。私が星を引っ張ってきますから。」

 

「だめだ。あれはお前たちのような下衆な者などが触れられならないくらい高尚なものなのだ。」と雪は言った。

 

マッサージ店の前で、リンダラーは突然また寒気を感じた。何故こんなに気温が変わったのか、不思議だった。

アキラは今までこんなことはなかった、もう帰ろうとリンダラーに言った。

しかしリンダラーは後10分程、ペンラムを待たせてほしいと言った。

そこでアキラは短冊を取り出し、ペンラム宛に、ここに来たが、会えなかったと書いた。

リンダラーは癪に障るようにそれを見た。

 

アキラについて歩いていると、助けを求める声がした。

辺りを見回すと、金魚すくいの屋台があった。そのうちの7-8匹の金魚が笊で救われまわって怪我をして苦しんでいた。

その中の数匹は病気にもなっていたので、全部買いたいと頼んだ。

しかし、店の人間はそれに応じなかった。

アキラは不思議に思ったが、何とか全部買い取ってやった。

突然、リエが通りかかり、アキラとリンダラーの間に勢いよく割り込んだため魚を入れた袋が落ち破けてしまった。リンダラーは悲鳴を上げた。

「私の魚が!」

そういうと、しゃがんで魚を掬い上げながら言った。

「頑張って、我慢してね。」

 

アキラは水を入れた袋を探してきて魚を入れた。

リエはリンダラーが動物好きな人間である様子が面白くなかった。

彼女は動物には興味がなく、追い払うだけだった。

 

リエは怒ってリンダラーの手の金魚を入れた袋を払い、地面に落とし破ってしまった。

魚は地面で体をバタつかせやがて動かなくなってしまった。

リンダラーはしゃがみこんで泣いた。

そして怒って立ち上がり、指を差しながら文句をいようとしていると・・

 

リエは星とミキ、アユミがやっていたのが見え、急に淑やかに可哀想ぶった。

 

「違うわ。私、わざと殺そうとしたんじゃないのよ。彼女を助けようとしたんだけど、

つい手から滑り落ちてしまっただけ。本当にわざとじゃなかったの。ごめんなさい。」

リエはリンダラーの腕をゆすりながら言った。

 

「放して!あなたがどんなひどいことをして私をいじめようとしても私は文句言わないわ。でもどうして他の命までにこんなことをするの?例えこの子たちは単なる金魚でも

彼らは自分たちの命を大事にしていたのよ。」リンダラーは腕を払った。

 

皆、リエを責めるように見つめた。リエは責められるのを恐れ、自分がはめられたのだと言った。

リンダラーは我慢できず、依然アルバイトを辞めさせられた時の話をしだした。

リエは彼女に跳びかかろうとしたが、アキラが腕を掴んで止めた。

ミキはリンダラーを連れて先に帰るよう星に頼んだ。

リエはリンダラーは嘘をついていると泣きながら言いつけた。

アユミが代わりにそれこそ嘘だと、リンダラーはそんな人じゃないと反論した。

リエは恐ろしい目で睨みつけ、それ以上何も言えないようにした。

アキラとミキはうんざりしてしまった。

 

リンダラーは金魚を埋めた。まだ涙が流れていた。

星は生まれて年を取り、病気になって死ぬのは普通の話だと慰めた。

彼女は自分が泣いているのは、この金魚の子供が自分の母親が死んだことをまだ知らないのが可哀想だからだと言った。

 

星は不思議に思い、どうしてそれがわかるのか尋ねた。

彼女はしどろもどろになり、単に想像しただけで、動物も人間も自分の愛する人との別れは悲しいはずだからだと言った。

星は自分にはそれがよくわかると言った。

リンダラーは「皇子はまるで愛する人と別れたことがあるみたいにおっしゃいますね。」と怪訝そうに言った。

 

「私とその人はただ傍にいられない、触れ合うこともできないだけです。

ですが私達は決して別れたわけではない,いつも互いの心にいるから・・、だからもう泣かないで、七月の星の姫が背中の痣が痛まない誕生プレゼントを誕生日にくれたのだから

もしそんな風に泣いているのを彼女が見たら、がっかりしますよ。」

 

リンダラーは泣き止んだ。星は自分からのプレゼントを受け取るために笑顔になってくれと言った。すると突然、空に美しい花火が上がった。

彼女は眼を大きく見開き、見入った。

そして星が「誕生日おめでとう」と言葉にした。

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次の日ーヒデノリは帰って使用人の女に襲いかかり、彼女が持ってきた食事を払いのけた。

妖怪であるせいで、食事の盆が遠くに吹っ飛び、使用人は驚愕した。

彼は誰も二度と部屋に入るなと怒鳴った。

彼女は彼の目がオレンジになっているのを見て恐怖におののき、使用人は俯いて震えた。

ヒデノリはさらに怒り狂った。

「俺の顔を見ろ!俺はお前が旦那にしたい小塚家の跡取りだろうが!なんでいつもやっているように、俺の気を引くことをしないんだ?今日、その思いを叶えてやるさ!」

 

ダイスケが入ってきて止めた。

使用人の女は逃げ出して行った。彼は顎をしゃくって、アツオに後を追わせた。

そして、振り返ってヒデノリを叱咤した。

「ヒデ。もしお前が自分を今トールできないのならお前の体の中の狐の物の怪の血がお前の人間としての存在を支配するだろう。そうなれば今後お前は人間としてはいられなくなるぞ。」

 

「いずれはそうなってしまうでしょうに・・。」

 

「それはお前次第だ。お前がまだ人間でい続け、狐としての能力を利用し役に立てたいなら自分の中の狐の物の怪を抑え、お前のより力を持たせるんじゃないぞ。」

 

使用人の女性は恐怖の余り、辞職を願い出たため、秘密の漏えいをさせないためアツオによって殺されてしまった。